ART & MUSIC IN WOODS - TOBIU CAMP at TOBIU ART COMMUNITY & FOREST OF TOBIU

MESSAGE / STORY

飛生芸術祭、TOBIU CAMPの会場となる飛生アートコミュニティーは、白老町竹浦の奥地、飛生(とびう)地区にある旧飛生小学校を活用して1986年に設立された共同アトリエです。
愛鳥指定校に指定されるほど、かつては豊かな自然環境であった学校裏の森は、放置されたまま荒れ果て、人間の立ち入りが困難な程、根深い笹や倒木で覆い尽くされていました。また飛生地区は少子化・高齢化・人口減少による過疎集落化が進み、かつての賑わいはすっかり消えていました。

もう一度子どもたちが森で遊べるように、そして人々が再び集まれる、かつての賑わいの場所を取り戻すことを目標とし、2011年より有志数名の手で「飛生の森づくりプロジェクト」がスタートしました。

一年間の森づくりの成果を発表することや、地域や住民の方々へ繫がりのきっかけを作ること、私たちメンバーによる様々な活動を知ってもらうことを意識し、年に一度9月に「飛生芸術祭」を、そしてこの飛生芸術祭会期中に、森で一昼夜を過ごす「TOBIU CAMP」を1泊2日で開催してきました。

私たちが考える森づくりプロジェクトは、人と人、人と地域がつながるための場づくりであると同時に、森づくりという作品づくりでもあります。また、人間が勝手気ままに切り開く森ではなく、森の循環可能な生態系を維持することを基本軸に据えています。
人間が森を舞台に表現行為をするために、共生の意識からその場の環境を知り、整えることを大切にしています。間伐作業、倒木や笹の撤去を6年間繰り返した現在の森は、元々あったであろう植生が蘇った場所もあり、若い芽の成長を手助けすることで循環や還元を促しています。
森の中に加わるアート作品はどれも自然素材や木材中心で作られ、やがて朽ちていきます。森の手入れと同時に作品にも、森のベンチにもメンテナンスが必要です。この手間こそ、この場所に人々が集う理由でもあります。
人工仮設物をできるだけ少なくし、場や土地に残す前提での森づくり、作品づくり、効率化からはかけ離れた手間と長い時間を必要とする状況をあえて作っていくことが、人との繫がりやコミュニケーションのための有機的な時間を育むものであると考えています。

あれから7年。
森づくり作業は想像していた以上に険しく、とてもハードなものでした。
一過性ではなく森と共に変化していく作品づくり=森づくりをしていきたいと願い、プロジェクトが今日まで続いています。苦労や課題の連続ではありますが、森と向き合ってきたこの6年間は、掛け替えのない出会いや繫がり、喜び、経験、たくさんの知恵を与えてくれました。そしてこの間に大切な仲間との別れがあったことも、私たちは忘れません。

飛生アートコミュニティーの設立から31年目。
飛生にはTupiu(トゥピウ)というアイヌ語源があり、その一説には「黒き大きな鳥の居る処」という意味があります。
私たちは創作のテーマに「物語」「神話性」を掲げ、「黒い鳥が居る」仮設を軸として、巨大な鳥の存在を連想する作品や、森の住人たちの家、道、火焚きの場などをこれまでに創作してきました。
子どもも大人も同様に想像を掻き立てられる空間、時間。一昼夜を森で過ごす体験。自分自身に委ねられた場所。参加アーティストたちによる物語りの演出。
芸術祭やTOBIU CAMPでは森と人による、百人百様の物語りが紡がれていくことを願っています。

飛生芸術祭は、年に1度の賑やかなイベント会期であると同時に、北海道の過疎集落からの文化、創造のアクションでもあります。
今、多くの地域で起きている過疎化、疲弊、少子高齢化などの課題、コミュニケーションの希薄、差別や虐待など「人」に関わる幾つもの社会問題を抱える時代の中、私たちの活動では文化や創造の価値、アーティスト独自の着眼点を大切にしたいと考えています。
人と人とが共有・共感できる体験、繋がれる場、他者を認め、受け入れられる瞬間、そんな時間や発見を、飛生の地で試し続け、提供すること、その一躍をアートが担っていけることを願っています。

来場者の皆さまへ。
飛生の地で、今年も飛生芸術祭・トビウキャンプ開催のご案内が出来ること、森の空間へお迎えできることを、活動メンバー共々とても嬉しく思っています。
完備された環境ではありませんが、どうか思いのままにゆっくりと過ごし、この地の時空間を楽しんでいただけることを願っています。
森で一昼夜を過ごすことができるトビウキャンプには、ぜひ大切な人とテントを持ってご来場ください。


飛生芸術祭 / TOBIU CAMP スタッフ一同より